「孤島パズル」 有栖川有栖 | カラクリリリカル
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「月光ゲーム―Yの悲劇’88」も良かったけれど
こちらは更に良い!!
推理小説研究会の有栖川有栖と、先輩の江神二郎が活躍する
「学生アリス」三部作の二作目です。
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有栖川 有栖
孤島パズル
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英都大学推理研初の女性会員マリアと共に南海の孤島へ赴いた江神部長とアリス。島に点在するモアイ像のパズルを解けば時価数億円のダイヤが手に入るとあって、早速宝捜しを始める三人。折悪しく嵐となった夜、滞在客のふたりが凶弾に斃れる。救援を呼ぼうにも無線機が破壊され、絶海の孤島に取り残されたアリスたちを更なる悲劇が襲う!
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女性会員マリアが加わって、ちょっと華やかになったEMC(英都大学推理小説研究会)。今回の舞台は、マリアの伯父の別荘がある南海の孤島です。
この夏休みのテーマはなんと宝探し!
マリアの祖父が残した遺言
『進化するパズルを解いた者がダイヤモンドの相続人となる』
の謎を解く為に、マリア・アリス・江神さんは孤島に向かうのです。
もう、出だしからかなりときめく設定です。
- 「月光ゲーム―Yの悲劇’88」のキャンプといい、
なんてこのシリーズは「私も学生時代そんな事してみたかった!」っていうシュチュエーションなんでしょう!
勿論、孤島で密室殺人事件が起き、無線機は使えず、クローズドサークルとなる本格推理小説なのですが
それでも清涼感倍増!ロマンチックで甘酸っぱくてセンチメンタルな夏休みなのです。
詩的で瑞々しい描写、アリスとマリアの初々しい微妙な関係。
殺人事件が起こらなくても「青春小説」として成立しそうな位
素晴しいです。
前作では少し引っかかった「キャラクターの書き分け」も今回は全く気にならず、
初老のダンディーなお医者様、優雅な生活を送る快楽主義者の画家
など、個性的で魅力的なキャラクターが登場します。
今回の「読者への挑戦」のセリフも素敵。
トリック、動機も十分納得のいく美しいものでした。
江神さんが論理的に事件を解明していくシーンは格好良くて、悲しくて、せつない。
一作ごとに格段に良くなっていくこのシリーズ
次に読む「双頭の悪魔」が凄く楽しみです。