「春期限定いちごタルト事件」 米澤穂信
米澤穂信さん
その名前は色々なラノベ・ミステリ書評サイト様で目にしていたようなんですが
ずっと「何故今稲垣足穂が???」と思っておりまして。
本日書店でこの本を目にして、全ての謎が解けたわけであります…
米澤 穂信
春期限定いちごタルト事件
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小鳩くんと小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが、互恵関係にある高校一年生。今日も二人は手に手をとって清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に奇妙な謎が…
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この作品は「日常の謎」ミステリーです。
第一印象は北村薫ライトノベルバージョン、といったところでしょうか、
凄惨な殺人等は起こらず、終始ほのぼのとした空気が漂います。
ミステリーとしては普通。北村薫の砂糖合戦のような完成度はありません。
しかし、面白いのは、ちょっぴりひねくれている小鳩くんと小佐内さん。
目立たないように目立たないように小市民を目指す、小鳩くんと小佐内さんは、
西尾維新作品主人公をを500倍薄めたようなようなキャラ
という感じなのですが
その薄さ・ぬるさ加減が逆にがかわいらしくて、微笑ましくて魅力的です。
今回は他の作者の方との比較ばかりになってしまいますが、
ミステリーとも言い切れないような、ライトノベルとも言い切れないような作風は、
乙一というより「GOTH」的な雰囲気も感じられます。
個人的には「GOTH」より好きでした。
(「GOTH」は作品自体の完成度は素晴しいと思いますが、乙一の巧さが逆に鼻についたというか、狙いすぎてる感があったような気がするんです…)
ここまで読むと「劣化北村薫+希釈西尾維新+乙一の雰囲気」のように取られてしまいそうですが
それが決して悪い意味ではなく
その微妙なバランスが不思議な世界観となって
しっかりオリジナリティーとなっていると思います。
既刊の他の作品は勿論のこと、今後の作品がどのように進化していくのか
是非読んでみたい作家さんだと思いました。