カラクリリリカル -45ページ目

「氷菓」米澤 穂信

春期限定いちごタルト事件 」より格段に良かったので、

私の中で一気に米澤 穂信さんブームが起こりつつあります。

(先日新宿と秋葉原で行われたサイン会に行かなかったのが悔やまれるほどに…)



米澤 穂信
氷菓

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何事にも積極的に関わらない奉太郎が、姉の命令で入部させられた古典部で、部員の少女の叔父が関わった三十三年前に起きた事件の真相に迫る。省エネ少年と好奇心少女が繰り広げる青春ミステリー。
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角川スニーカー文庫というラノベレーベルから出ていた作品が角川文庫から新装版として出たものなのに、

創元推理文庫から出ている「春期限定~」よりラノベっぽくない不思議w


ストーリーは、日常の謎3つからメインの謎に繋がっていく連作短編形式で

やはり日常の謎3つはちょっとぬるいのですが、メインの謎がとても良かった


「氷菓」の謎が明らかになる時、

「三十三年前の青春」と、「現代の登場人物達の青春」、そして「読み手の現在・または思い出としての青春」が交錯して、物語の世界が変貌する─────

その一瞬の、美しさ・鮮やさに脱帽。

余りに瑞々しくて痛々しい「青春」が胸に迫ります。

キャラクターも個性的でかわいらしい。

「春期限定~」と同じく主人公がひねくれてはいるのですが、こちらは過去の変なトラウマの匂いを漂わせないところが好印象。

個人的にはこちらの主人公&ヒロインの方があざとくなくて好きです。

(萌えという観点では、この作品のヒロインである千反田えるは、「春期限定~」の小佐内さんにちょっと負けてるかな?)

地味なんだけれども、この作品は凄い。

米澤 穂信さんが色々なサイトさんで絶賛の理由が解りました。

「氷菓」、素晴しい青春小説です。

かなりオススメ。

モーニング読み切り「ユーレイ窓」が面白い

週間モーニング34号に掲載された読み切り、

「ユーレイ窓」三宅乱丈 が凄く良かったので取り急ぎ。
(週刊誌なので今すぐ書店へ!)


この方の漫画、「大漁!まちこ船」と「ヒーローズ」しか読んだことがなく、

そんなに好みではなかったのですが

「ユーレイ窓」、かなり好きです!!


ミステリとしてもホラーとしても良く出来た作品だと思います。


同じストーリーが小説だったとしても、ここまで怖くない。
漫画だからこそ良い!!というストーリーはなかなか無いと思うのですが、如何でしょうか。

是非是非おすすめです!

「死が二人をわかつまで」ジョン・ディクスン・カー

有栖川有栖さんの「46番目の密室」の作中で、
「カーの『ユダの窓』は史上最上の密室トリック」という記述
(正しくは作中に登場する『ロックド・ルーム・マーダーズ』の引用ですが)
が気になって、近所の書店に行ったところ、カーの作品はこの一冊しか置いていなかったのでとりあえず購入しました。



ジョン・ディクスン・カー, 仁賀 克雄
死が二人をわかつまで

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劇作家ディックは幸せの絶頂から不幸のどん底へと叩き落された。
婚約者を毒殺魔だと言った占い師が、銃弾に倒れたのだ。
撃ったのはその婚約者。そして起きる密室殺人事件。
婚約者への愛と疑惑。彼女は殺人犯なのか!?
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表紙から、ゴシック系のものを想像していたのですが、
この作品は「古き良きイギリスの小さな村で起こる殺人事件」。

密室の巨匠ということでかなり期待して読み始めたのですが

肩透かしされてしまいました。

と、いうのも、

かなり魅力的な謎の真相がストーリー前半で明かされてしまい

残された謎は然程魅力的では無いのです。


また、探偵役であるフェル博士の魅力が全く伝わってこないのがツライです。キャラクター描写も無ければ、「格好良い!」となる論理展開シーンも無い…


まだこのシリーズは一冊目なので何冊か読めば違ってくるのでしょうか?

最初に読むには不向きなものを選んでしまったのか、それともこういう作風の作家さんなのか気になるところです。


主人公であるディックが、婚約者への疑惑に揺れる心理描写も

いまいちキャラクター描写が弱く感情移入がし難いせいか

スリリングさに欠けました。


トリックに関しては斬新なものではありませんが
密室での毒殺という組み合わせで巧くまとめていると思います。


悪くは無いけれど、全般的に平凡。

同じ「古き良きイギリスの小さな村で起こる殺人事件」なら

アガサクリスティの方が面白いな、と思ってしまいました。

同じ構成でも、ポワロとヘイスティングズが探偵役ならニコニコして読んでしまったでしょうw

この本を購入した際に、名作と名高い「ユダの窓」と「三つの棺」
の2冊を注文して参りました。

とりあえず、その2冊を読んでから、私がカーを読むのに向いているか向いていないのか判断したいと思っていますw

ネトミス活動番外編  観劇「マウストラップ」(原作:アガサクリスティ)

ネトミス設立当初、そのフライヤーを発見し

会長と「第一回活動にしよう!」とチケットを購入した
劇「マウストラップ」(アガサ・クリスティー原作)

を観て参りました。

(その後無事会員が3名に増え、第一回活動ではなくなりましたが…)

マウストラップ


会長と推理合戦を行えるよう、原作は敢えて読まずに観劇です。

推理タイムがあるといいな、と思っていたら
バッチリ 問題編 15分休憩 解答編 という大変楽しめる構成。

読書とは違い、頁を戻ることが出来ないので、手がかりを見逃すまいと一瞬も目が放せません。


イギリスで演劇史上最長のロングランというこの劇、

流石アガサ・クリスティー!といった感じの

コミカルでありスリリングでもあり、

『人間』というものを良く描いたストーリーだと思います。



劇の感想としては、

ボイル婦人役の淡路恵子さんという方が本当に素晴しかった!

の一言に尽きます。

上品だけれど、嫌味たっぷりで意地悪な老婦人役で、

この方が出てくると、完全に空気が違いました。

演劇や演技のことはわからない私ですが、明らかに別格だというのがわかります。

つい、役者さん全員がこのレベルのお芝居を見てみたい、という贅沢なことまで考えてしまいました。


逆にジャイルズ役の内海光司さんは、あまり舞台に慣れていない方なのかな?
少し違和感が目立ったような気がします。

(詳しくないので違ったら失礼致します)


テレビや映画であれば、かなりの実力差があっても

やはりカット等があるので、ここまで空気があからさまに違うことは(私には)わからないと思うのですが、舞台って怖ろしいものですね。

小説とは違い、論理的には「この人物が犯人である」ということに矛盾が無くても

役者さんの演技でその「納得感」が左右されてしまうのも舞台ならではといった感じです。


ちなみに謎解きは、私も会長も大ハズレでしたw


それにしても、英語はわからないけど本場イギリスの「マウストラップ」を一度見に行ってみたい!!



アガサ・クリスティー, 鳴海 四郎
ねずみとり

映画「姑獲鳥の夏」見てきました

京極堂
↑映画館横に設置されていた京極堂入り口セット


かなりダメダメとの噂を耳にして

あまり期待せずに見に行きました、映画「姑獲鳥の夏」


期待度がかなり低かったせいもあるのでしょうが

思ったよりは悪くなかったです。


セットは良く出来ているし、確かに安っぽいは安っぽいのですが

それが逆に一昔前の映画の雰囲気が出ていて

「これはこれでいいんじゃないか?」

という印象でした。


脚本も、あの薀蓄だらけの分厚い本を、あれだけ上手くまとめていれば及第点。

早口&駆け足過ぎて、謎が提示された後速攻解決編に入ってしまい

もう少し謎を堪能して、頭を悩ませる時間があるともっと良いとは思いましたが

時間的なことを考えるとしょうがないでしょう。


原作を全く読んでいない連れも、ストーリーはちゃんと理解していたので

「原作を読んでいないとわからない」

という作品では無いようです。


キャストは、事前にメンバーを見た時

「これは違うだろう!!」とかなり遺憾でしたが

永瀬正敏、田中麗奈、宮迫博之はかなりの好演。

阿部寛は続編でのキレっぷりに期待といったところです。
肝心の堤真一はやっぱり私のイメージとは違いますが…


ダメダメだったのは、
スポットの多用(眩暈坂のスポットは駄目でしょう!)と

音楽(恐怖感を無駄に煽り過ぎ?)、

時たま挿入されるリアル姑獲鳥の映像

の3点がチープ過ぎたこと。


かなりダメダメだったのは

京極堂の決め台詞言い過ぎ(ラストの部分は絶対不必要!)

憑き物落としのシーンが派手過ぎ(ドラマ「陰陽師」じゃないんだから…)

の2点。


賛否両論あるとは思いますが

京極夏彦ファンが楽しめるシーンもあったので、

個人的には是非続編として「魍魎の匣」も制作して欲しいです。