カラクリリリカル -46ページ目

「春期限定いちごタルト事件」 米澤穂信

米澤穂信さん

その名前は色々なラノベ・ミステリ書評サイト様で目にしていたようなんですが

ずっと「何故今稲垣足穂が???」と思っておりまして。


本日書店でこの本を目にして、全ての謎が解けたわけであります…



米澤 穂信
春期限定いちごタルト事件


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小鳩くんと小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが、互恵関係にある高校一年生。今日も二人は手に手をとって清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に奇妙な謎が…
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この作品は「日常の謎」ミステリーです。

第一印象は北村薫ライトノベルバージョン、といったところでしょうか、
凄惨な殺人等は起こらず、終始ほのぼのとした空気が漂います。

ミステリーとしては普通。北村薫の砂糖合戦のような完成度はありません。


しかし、面白いのは、ちょっぴりひねくれている小鳩くんと小佐内さん。

目立たないように目立たないように小市民を目指す、小鳩くんと小佐内さんは、
西尾維新作品主人公をを500倍薄めたようなようなキャラ
という感じなのですが
その薄さ・ぬるさ加減が逆にがかわいらしくて、微笑ましくて魅力的です。


今回は他の作者の方との比較ばかりになってしまいますが、
ミステリーとも言い切れないような、ライトノベルとも言い切れないような作風は、
乙一というより「GOTH」的な雰囲気も感じられます。

個人的には「GOTH」より好きでした。
(「GOTH」は作品自体の完成度は素晴しいと思いますが、乙一の巧さが逆に鼻についたというか、狙いすぎてる感があったような気がするんです…)


ここまで読むと「劣化北村薫+希釈西尾維新+乙一の雰囲気」のように取られてしまいそうですが
それが決して悪い意味ではなく
その微妙なバランスが不思議な世界観となって
しっかりオリジナリティーとなっていると思います。


既刊の他の作品は勿論のこと、今後の作品がどのように進化していくのか
是非読んでみたい作家さんだと思いました。

映画「姑獲鳥の夏」が…

映画「姑獲鳥の夏」が『超映画批評』様で今週のダメダメ


映画批評家の前田有一様の『超映画批評』様の採点は、かなり信頼を置いていて、映画を見る前の参考にしたり、
見た後に「うんうん」と頷きながら拝見させて頂いているサイト様なのですが…


CMを見て「ちょっと安っぽいかも…??」とは思っていましたが
やっぱりダメでしたか…
という感じ。



気になるので映画館には見に行く予定ですが、
お蔭様で心の準備ができましたw

それにしても原作付きのミステリー映画はどうにもハズレが多い…

「孤島パズル」 有栖川有栖 

「月光ゲーム―Yの悲劇’88」も良かったけれど
こちらは更に良い!!
推理小説研究会の有栖川有栖と、先輩の江神二郎が活躍する
「学生アリス」三部作の二作目です。



有栖川 有栖
孤島パズル


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英都大学推理研初の女性会員マリアと共に南海の孤島へ赴いた江神部長とアリス。島に点在するモアイ像のパズルを解けば時価数億円のダイヤが手に入るとあって、早速宝捜しを始める三人。折悪しく嵐となった夜、滞在客のふたりが凶弾に斃れる。救援を呼ぼうにも無線機が破壊され、絶海の孤島に取り残されたアリスたちを更なる悲劇が襲う!

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女性会員マリアが加わって、ちょっと華やかになったEMC(英都大学推理小説研究会)。今回の舞台は、マリアの伯父の別荘がある南海の孤島です。

この夏休みのテーマはなんと宝探し!

マリアの祖父が残した遺言
『進化するパズルを解いた者がダイヤモンドの相続人となる』
の謎を解く為に、マリア・アリス・江神さんは孤島に向かうのです。

もう、出だしからかなりときめく設定です。
「月光ゲーム―Yの悲劇’88」のキャンプといい、
なんてこのシリーズは「私も学生時代そんな事してみたかった!」っていうシュチュエーションなんでしょう!


勿論、孤島で密室殺人事件が起き、無線機は使えず、クローズドサークルとなる本格推理小説なのですが
それでも清涼感倍増!ロマンチックで甘酸っぱくてセンチメンタルな夏休みなのです。

詩的で瑞々しい描写、アリスとマリアの初々しい微妙な関係。
殺人事件が起こらなくても「青春小説」として成立しそうな位
素晴しいです。

前作では少し引っかかった「キャラクターの書き分け」も今回は全く気にならず、
初老のダンディーなお医者様、優雅な生活を送る快楽主義者の画家
など、個性的で魅力的なキャラクターが登場します。

今回の「読者への挑戦」のセリフも素敵

トリック、動機も十分納得のいく美しいものでした。
江神さんが論理的に事件を解明していくシーンは格好良くて、悲しくて、せつない。


一作ごとに格段に良くなっていくこのシリーズ
次に読む「双頭の悪魔」が凄く楽しみです。




「ドッペルゲンガー宮―“あかずの扉”研究会流氷館へ」 霧舎 巧

またまた大学サークルものです。
今回は、「ミステリー研究会」ではなく、「あかずの扉研究会」!!



霧舎 巧
ドッペルゲンガー宮―“あかずの扉”研究会流氷館へ


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第12回メフィスト賞受賞作。

北澤大学新入生、二本松飛翔(かける)は、サークル《あかずの扉》研究会に入会した。自称名探偵、特技は解錠などクセ者ぞろいのメンバー6人が、尖塔の屹立する奇怪な洋館“流氷館”を訪れた時、恐るべき惨劇の幕が開く。閉鎖状況での連続殺人と驚愕の第トリック!
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館、クローズドサークル、連続殺人、双子・・・などなど
本格の香りが凝縮したような作品。

そこに横溝正史的な恐怖のスパイスが加わって
読みながらちょっと怖くなり、後ろをついつい何度か振り向いてしまいました・・・


キャラクターはとても漫画的で、
駄目な人は本当に駄目かな?という気がしますが
私は、その軽さと怖さのバランスが丁度良かったです。

皆さんおっしゃっていますが、探偵役の後動さんは江神さんとイメージが被りますねw

この作品の見所は、何と言っても館にいる自称名探偵・鳴海雄一郎と
館の外にいる名探偵・後動悟が携帯電話を介して行われる、同時推理

あのシーンだけの為にも読む価値有り!という格好良さ!!


後半あまりに後動さんの頭の回転が速すぎて
二転三転する推理についていけない部分があったり
読後疑問が残る箇所もありましたが、
舞台や登場するアイテムの雰囲気・張り巡らされた伏線・大掛かりな仕掛け、大変読み応えがありました。

続編も是非集めていきたいシリーズです。

ネトミス定期活動報告

現在会員3名、3度のメッセンジャー例会を開きました。

例会第一回
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「どんどん橋、落ちた」の短編「どんどん橋、落ちた」の推理発表会、
全員でその場で解答編を読んでの作品評論・感想会。
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例会第二回
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「どんどん橋、落ちた」の短編「ぼうぼう森、燃えた」の推理発表会、
全員でその場で解答編を読んでの作品評論・感想会。
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例会第三回
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会長作品「ステイブル荘の悲劇 問題編」推理発表会
全員でその場で解答編を読んでの作品評論・感想会。
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著者: 綾辻 行人
タイトル:どんどん橋、落ちた

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ミステリ作家・綾辻行人に持ち込まれる一筋縄では解けない難事件の数々。
崩落した〔どんどん橋〕の向こう側で、殺しはいかにして行われたのか?
表題作「どんどん橋、落ちた」や、明るく平和なはずの“あの一家”に不幸が訪れ、悲劇的な結末に言葉を失う「伊園家の崩壊」など、5つの超難問“犯人当て”作品集。
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ネットミステリー研究会「Mystereaders Net」通称ネトミス

http://www.geocities.jp/mistereaders/

上記の活動内容を読まれて興味のある方はコメント欄までどうぞ!